Most of all




 可愛らしいリボンの掛けられた、その手には不釣り合いなプレゼントと、おめでとうという優しい声が嬉しくて、つい彼の胸に飛び込んだ。その名前と、たった四文字の言葉に想いを全部積め込んで、
「―、大好き!!」
 と、告げる。
 けれど精いっぱい腕を伸ばしてぴったりとくっついた身体が一瞬強張ったのが分かった。
 だけれどすぐに宥めるように温かい言葉をくれた。こんなにぬくもりは近いのに、心ははぐらかされたような気がしてたまらずしがみつくように力を込めた。
 そうすればそっと頭を撫でてくれるけれど、きっと困らせてしまった。もしもその顔が呆れていたらと思うと胸がとても苦しかった。


 大切な人たちみんなと祝った、幸せな誕生日の日。
 その夜、少女は夢を見た。
 色とりどりの花が咲き誇る、どこかのお城の庭みたいな花畑。そこで淡い桃色の花でふんわりとした冠を編む。16歳の誕生日に迎えに来てくれるという、王子様に捧げる王冠だ。
「ヘンリエッタ」
 名前を呼ばれて振り返ると、そこには見知った、けれど確かに彼女の王子様がいた。
 ゆっくりと壊れやすいものに触れるようにそっと抱き上げられる。近くなったその頭に手を伸ばし、編み上がったばかりの花冠をのせる。
 少女の心そのものを戴いた彼の首にぎゅっと抱きつくと、ほんの少し慌てたようにおろされてしまった。
「………―」
 それがちょっと不満で、拗ねたように名を囁くと、困ったように首を傾げる。その照れたような頬に、自然と笑みが零れた。
「―、だい、すき」
 うつむいて、かみしめるように四文字の言葉を唇にのせた。やっぱり彼は息を呑んで、けれどきっと優しい言葉をくれるのだろう。
「すき、じゃあ、ない」
 痛みを孕んだ声が耳に届いて、弾かれたように顔を上げた。見つめた顔は、優しげで、でも苦しそうだった。
「すき、なんかじゃあないんだよ」
 かんで含めるようにもう一度。繰り返された言葉は、時刻を告げる鐘の音のように何度も頭の中で響く。その響きが胸に刺さって、その疵から溢れた血が透明な雫になって目から零れそうになる。
 けれどそれが墜ちるよりもよりも先に落ちてくる。
 顔に影が、耳に声が、額に羽のようなキスが。
「あいしてるんだ」
 その想いが頭に、胸に沁みわたったとき、やっぱり涙が墜ちた。
「だいすきよ」
 足りないのなら、何度でも口にしよう。


 そしてもうひとつ。
 想いの丈を込めた四つの文字と、五つの文字を。
「だれよりも」



後書き
 ながらくWeb拍手を務めてくれました、ざっと一年以上(笑)
 やっぱりグリムの話を書くときは砂糖とスパイスと何か素敵な物と唱えながらだと思います。

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